「俺と付き合ってくれるか?」
そう言われたあの日から早、二週間。
私は未だに自分の聴覚を疑ってる
いつもと違う日曜日
日曜日のお昼前
騒がしい人ごみの中、公園の時計台の下で待ち合わせするカップルは絶えず
私も初めてその波に紛れこんだ
もう春がそこまで近づいていることを知らすような暖かな春の日差しの中、
腕の時計を見ると針は10時10分前をさしていた
「おはよ、」
まるで俯くようにして立っていた私に降りかかった声
顔を上げて応えればぷうと風船ガムを膨らませた丸井ブン太がいた。
「…おはようございます、丸井先輩。」
「悪いな、遅れて」
「いえ、私も今来たとこですから。」
ブン太が行こうか、と目で話せばは頷いて答え
石のように重かった足を動かす
今日は映画、と聞いていたので多少寒くても大丈夫だと判断し、スカートを身に纏った
春に相応しく芝生の黄緑色の布地に花の刺繍がはいったスカート
によく似合っていた
「丸井先輩って…」
「ブン太でいいよ?」
は言いかけた口をいったん元に戻し、その言葉にコクリと頷いた
「ぶ、ブン太先輩は…」
「ん?」
「甘いもの好きなんですよね?」
「あぁ、結構好き」
そう言葉を発した後にぷうと風船ガムを膨らませるブン太
少し視線を落とせばブン太のポケットからはいくつかのアメ玉やスペアのガムが覗いている
「私の友達が、言ってたんです。」
「へぇ、俺の甘いもの好きってなぜかほとんどの女子が知ってるんだよな。誰か噂流してんのかな?」
あれだけガムを毎日噛んでいたり、
駅前のケーキバイキングには必ず現れたりすれば自然と解るものだが、本人に自覚はないらしい
再びぷうと膨らんだガムをは見つめながらそう思った
「映画ってどれ観るんですか?」
「ん、これにしよっかなって。希望があるならそっちにするけど?」
「あ、私もこれでいいです。」
「そっか、あ、何か食べたいもんある?」
指差されたメニューを見れば、映画定番のポップコーン、飲み物、ソフトクリームなどの種類が並んでいる。
ブン太と同じく甘いもの好きのにとってはたまらないメニューとも言えた
「え、えっとじゃあポップコーンとコーラで…」
「OK、先に座ってて」
指示された通り半券を係員に渡して中に入ると驚くほどすいていた
本当に日曜の真昼に放送されているのか、と疑うほどに数えるほどしかいない観客に自信も驚き、
ブン太に解りやすい位置の席に腰を落ちつけた
映画が始まる少し前にブン太が戻ってきて、の隣に座り、ソフトクリームを食べ始めた
美味しそうなソフトクリームは自分も食べたかったが、今はダイエット中
(ジロジロ見るのも失礼だしね…。)
自分の理性が利きそうにないので、は逃避することにした
目をそむけると、何故かそこにはソフトクリームのアップが
「はい、これはの分な」
「えっ?」
「、甘いもん好きだろ?こっちも一応お前のことリサーチしてるんだぜ?」
差し出されたソフトクリームを突っ返すことも出来なくて、は一口含んだ
「お、美味しいっ!」
「だろぃ?甘いばっかのソフトクリームじゃねえんだ。牛乳がすごい濃厚でさ」
「はい!」
その時にの頭にダイエットの文字が浮かび上がった
それにつられてついつい食べ進めるのを止めてしまう
「ん?どうかしたか?」
「あ、私、ダイエットするつもりが…」
「ダイエット?」
ソフトクリームをほとんど食べ終わりながらブン太は言った
は俯き加減で話を続ける
「最近ちょっと太ったみたいで…」
「お前が?俺は全然そう見えねぇけどな」
まじまじと見つめるブン太には赤くなった
ブン太もが赤くなったことに気付いたようで、笑みを浮かべた
「俺のこと、少しは好きになってくれた?」
そう言った時、あたりがふっと暗くなり大音量で映画が始まる
はおずおずと顔を上げ、横目でブン太を見つめた
彼はスクリーンの方に目を向け、映画を楽しんでいた
は、気が気ではなかった
好きだから、付き合おうと言われて、でもその相手は学園で人気の丸井ブン太先輩で
しかも、自分が前からずっと好きだった人
でも、自分よりも遥かに遠い場所に立っていたブン太には追いつくわけないと諦めた。
人見知りが激しくて、友達も出来なくて、灰色の日々を送っていた
そんな毎日を鮮やかに染め上げた恋
全ての緑が色づいて、陽の光りが穏やかに感じるようになった恋
―――――そして、既に諦めた恋だった
学年が違うことを始めとして、話す機会は無かったし、自分から話すことも出来なかった
だから、ブン太に話しかけられて、告白されたことが夢だと思えてくる
嬉しいという気持ちよりも先に、自分の何処がブン太に気に入られたのかが知りたかった
映画が終われば、答えなければいけないのだろうか
先ほどの質問の答えを
『俺のこと、少しは好きになってくれた?』
ブン太はまだ知らない
が、ずっとブン太を好きだったということを
は、少しずつ終わりへと近づいていく映画に見入ることは益々出来なくなってしまった
「面白くなかった?映画」
「え」
「食事の時からずっと元気ないし。体調悪い?」
す、とブン太の手がの額にくっつく
冷たいの額とは裏腹にブン太の手は暖かかった
春先とはいえさすがに公園に居るのは冷えたのか、は手をもじもじとさせている
少しでも熱が得られるようにしたいのか、そんな小さな仕草がブン太には可愛く見えた
「ブン太先輩、私、先輩のこと好きだと思うんです」
「え、本当か!?」
「…………多分」
「……その間は何だ?」
「私、実はずっと前に先輩のことが好きだって知ってて。でも、先輩は私にとってどんどん遠い人になっちゃって」
「……うん」
「怖かったんです。何もない自分をブン太先輩に知られるのが。
私の良いところなんて何もないってことを私が一番知ってるから。」
誰もいない教室
夕陽のさす中で、一定の音で聞こえる音
窓を開けたら、風と一緒に入ってきた
誰よりも憧れて、誰よりも隣に立ちたいと願わせた
「あのさぁ、それは間違ってる」
「何処がですか?」
「には良いトコいっぱいあると思うぜ。こないだも、猫にえさやってたよな」
「え?」
「裏庭で。飼ってるんだろ?
やってることは王道だなって思ったけど、
俺、あの時に見たお前の柔らかい表情忘れられないんだけど?」
片腕を袖から抜いて、を上着の中に入れてやる
服を通して伝わってくる彼女のカタチが心に触れる
「俺は、お前のあの笑顔が好きだ。それに、何よりこうして俺が傍にいても嫌がらないし?
ってことは、今もお前は俺を好きってこと」
「…文が上手く繋がってないと思うんですけど」
「当たり前だろぃ、俺、国語の成績悪いもん」
「それは国語とかのもんだいじゃないんじゃぁ…」
「まぁ、とにかく…!」
「俺がお前を好きなのと同じ位お前も俺が好きなら良いんだよ。
人の気持ちなんて殆どが言葉に表せないもんだ、特に恋愛沙汰はな」
「…やっぱりよく解らないです」
「ははっ、悪い」
「でも、ブン太先輩の傍には居たいです。」
「俺のこと、少しは好きになってくれた?」
「はい。ブン太先輩の優しさにやられちゃいました//////」
「天才的だろぃ」
「ふふ、はい。」
天才と呼ばれるその人は、無様な告白をして自らを凡人と言ったけれど
私にとっては心を掴む天才としか思えない人だった
☆あとがき
テニプリ初夢書きはブン太くんでしたー!
彼は今回結構下手に出てましたね。(付き合って欲しいからね)
でも、私の中のブン太くんはもっと押せ押せ系なので(笑)
必然的にブン太くん夢、増えていくと思いますよー。